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ファミリーオフィスとは?専門家がわかりやすく解説

ファミリーオフィスとは、一族の永続化を実現するために、有形無形の富を管理、運用する組織です。
本記事ではファミリーオフィスの概要から設立や運営、導入メリットといった全体像をファミリーオフィスに特化したコンサルタントが詳しく解説します。

【参考資料】ファミリーオフィスについて

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目次[非表示]

  1. 1.ファミリーオフィスとは~役割と定義~
  2. 2.ファミリーオフィスと資産管理会社の違いは何か
  3. 3.ファミリーオフィスが対象とする2つの資産
    1. 3.1.有形資産:ファミリービジネスや一族全体で保有する資産
    2. 3.2.無形資産:創業者の想いや一族間の関係性など目に見えない資産
  4. 4.ファミリーオフィスを必要とする、もしくは対象となるのはどのような人か
  5. 5.ファミリーオフィスの役割や導入するメリットにはどのようなものがあるか
    1. 5.1.資産運用
    2. 5.2.事業承継
    3. 5.3.次世代の教育
    4. 5.4.一族の絆の強化
  6. 6.ファミリーオフィスを導入する前に知っておくべき課題
    1. 6.1.世代を超えて一族全体の取り組みを継続する難しさ
    2. 6.2.一族を支え続けるファミリービジネスもしくは保有資産の安定性と成長性
  7. 7.ファミリーオフィスの設立・運営にはどのような準備が必要か
    1. 7.1.設立に向けて
    2. 7.2.運営上のポイント
  8. 8.ファミリーオフィスを活用している事例
  9. 9.日本のファミリーオフィスの実態について
    1. 9.1.普及していない4つの原因
    2. 9.2.経済産業省主催:ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会

ファミリーオフィスとは~役割と定義~

ファミリーオフィスとは、一族の永続化を実現するために、有形無形の富を管理・運用する組織です。
ファミリーオフィスが対象とする富は、現金預金・有価証券・不動産等の目に見える有形資産だけではありません。
一族が大切にしている価値観や一族がこれからも担っていく使命、一族が目指すべきビジョン、一族間の絆、さらには一族が培ってきた経験、人脈などの目に見えない無形資産も対象にすることがファミリーオフィスの特長です。

これらを統合し、青山財産ネットワークスグループではファミリーオフィスの定義を「ファミリーの充実した人生と幸せな繁栄、その世代を超えた実現を目的として、ファミリーの財・体・心をバランスよく拡大する役割を担う組織」としています。

ファミリーオフィスと資産管理会社の違いは何か

ファミリーオフィスと資産管理会社の最大の違いは、管理・運用の対象です。
資産管理会社は一般的に株式や不動産などの有形資産を管理・運用するための器としての役割に特化しています。
一方、ファミリーオフィスが管理・運用する対象資産は、有形資産に加え、一族の持つ無形資産(=一族のもつ価値観や使命、社会からの信頼・評判など)にまで及びます。

詳しくは別記事「ファミリーオフィスと資産管理会社の違い」をご覧ください。

ファミリーオフィスが対象とする2つの資産

有形資産・無形資産

有形資産:ファミリービジネスや一族全体で保有する資産

ファミリーオフィスが保有する有形資産は、ファミリーオフィスを通じてその一族集団が共有する資産と位置づけられます。
したがって、ファミリーオフィスが有する有形資産の存在意義と役割は、個人が単に運用資産として持つ有形資産の存在意義と役割を遥かに越えます。

例えば、ファミリーオフィスが持つ有形資産の中でも代表的な存在である一族事業(=ファミリービジネス)は、一族という集団に対して、単に金銭的な富をもたらす源泉であるばかりでなく、その活動を通して一族への社会からの信用といった無形資産の蓄積に資する存在です。
このような一族の有形・無形の資産形成の加速器としての意味を持つ一族事業は、一族のアイデンティティとなり、精神的な拠り所しても重要な意義を持ちます。

そして、一族事業から得られたキャッシュフローは、例えば、一族事業や一族のメンバーの不測の事態に備えたり、事業の更なる進化や一族のメンバーの教育や慈善活動に使われたりする。つまり一族がもつ有形・無形の資産をより良くして次世代に承継していくスチュワードシップを果たすために使われることが本質的に重要です。このように、ファミリーオフィスが持つ有形資産は、その目的と整合的に一族の永続化に資する運用・管理をされることが求められているのです。

別記事「ファミリーオフィスの対象となる資産〈有形資産編〉」もあわせてご覧ください。

無形資産:創業者の想いや一族間の関係性など目に見えない資産

上述のファミリービジネスの文脈における無形資産は、人脈によるビジネスチャンスの創出や、一族メンバーが持つ経験を駆使して難しい局面を乗り超える力の源泉となり、一族と一族事業に持続的成長をもたらします。

このように一族と一族事業に重要な役割を果たす無形資産ではあるものの、その効果だけでなく存在自体すら認識することが有形資産と比較して難しい点が挙げられます。一族メンバーの属人的レベルで、しかも無自覚にしか使われていないことが多くあるためです。
つまり、ある一族メンバーが持つ無形資産を他の一族メンバーは活用することができず、機会損失が生じていたり、世代交代とともに無形資産が無自覚の内に失われてしまったりすることがまま見られます。

したがって、こうした無形資産の価値を後継世代へ承継するためには明確な仕組みの確立が不可欠であり、その役割を担う器がファミリーオフィスです。有形資産と同様に、無形資産についても管理・運用・承継する仕組みを持つことで、一族が持つ無形資産は、一族及び一族事業が持つ価値について、より強く差別化を図っていくための源泉になり得ます。

別記事「ファミリーオフィスにおける無形資産の効果的な活用戦略」もあわせてご覧ください。

ファミリーオフィスを必要とする、もしくは対象となるのはどのような人か

ファミリーオフィスは永続化を目指す一族集団に必要なツールです。そのため、一族の代表者が単独でファミリーオフィスを設立するよりも、一族メンバーが一致団結して集団でファミリーオフィスを設立することで、より意味を持たせることができます。


一族が永続化を目指す意義は、一族と一族の持つ有形・無形の資産価値が支え合う関係性を超長期的に構築することで、双方の大きな成長を期待できる点にあります。
そのような一族の永続化の意義を踏まえても、超長期的な観点からの意思決定が強みであるファミリービジネスだからこそ、短期的な事業利益の極大化を求めるのではなく、一族理念に基づく公正で一貫した利益分配により一族メンバー間や外部のステークホルダーとの信頼関係を強固にしていく経営姿勢が重要と言えます。

そして、こうした世代を超えた理念の承継とそれに基づく一貫した活動を一族が実現するには、仕組みの確立と運用が重要であり、それを担うのがファミリーオフィスであると言えます。

別記事「ファミリーオフィスの活用が適している一族とは?重要性と効果を解説」もあわせてご覧ください。

ファミリーオフィスの役割や導入するメリットにはどのようなものがあるか

資産運用

資産運用はファミリーオフィスの中核業務の1つであり、その特長は、一族の共有財産の合同運用を行うことです。
そして、その合同運用における各種判断を金銭的リターンのみを評価項目として行うのではなく、無形資産を考慮に加えてて行うことも特長として挙げられます。

それは、有形資産運用の判断に無形資産の要素を加えることで、一族で行う資産運用の目的・意義がより確固たるものになり、有形資産の持続的な価値向上に資する中長期的な行動が期待できるからです。

例えば、有形資産の運用益だけを期待する者が集まった集団は、その運用成績によっては、短期的に離散してしまう恐れがあります。
一方で、有形資産を運用する根源的な共通の目的・意義や時間軸を共有することができている集団は、一過性の損益による判断を超え、長期的視点に基づいた目指すべきビジョンへ向けた運用が可能となります。

別記事「ファミリーオフィスが行うべき資産運用」もあわせてご覧ください。

事業承継

これまで日本の親族承継では、後継者となる子ども1人に経営を任せ、株式も集中させることを望ましいと考える傾向がありました。
後継世代の複数人への経営権や株式の分散承継は意思決定上の混乱を引き起こし、経営承継者の安定した経営の妨げになる他、事業への非関与株主からの買い取り請求による財務への悪影響を懸念されてそのような傾向があったと考えられます。

しかし、1人に株式を集中させることは、成長を続ける優良企業であるほど、承継者の負担する承継コストが世代を増すごとに大きくなります。
そして、その承継コスト負担が法人・個人を合わせた財務体力を超えるケースも増加します。
また、経営執行については、一人にすべての権力が集中するため、経営者の独善的な行動を抑止することは一般に困難になるという弊害も生じます。
そして、一族の中から事業を成長させられる経営能力を持つものを輩出し続けることを期待するのは現実的に困難であり、超長期的なファミリービジネスとしての継続を考えた際に、経営を一族外の専門経営者に任せる方がより適切なケースも増えていくことにも備えなければなりません。

ファミリービジネスの強みへの再評価が進む中、一族が集団統治する事業承継や、所有と経営の分離を考慮した事業承継も視野に入れることが求められてます。
その背景には、従前の一族の中の誰かひとりに株式と経営を承継する手法によって、事業承継準備を税務に偏重させることがあり、場合によってはそれが『企業価値の棄損』や『エントレンチメントを発生させる構造』、『ガバナンス上の懸念』、『所有と経営の分離への未対応』、といった弊害も存在するためです。

その際に、ファミリーオフィスを活用した、一族の総意に基づく意思決定が重要な役割を果たします

別記事「ファミリーオフィスが事業承継で果たす役割」もあわせてご覧ください。

次世代の教育

永続化を目指す一族において後継世代の人材育成こそが根幹です。後継世代には一般教養だけでなく、一族の価値観や一族事業の後継者に求められる業界知識・リーダーシップなどを学ぶことが求められます。
一族コミュニケーションのハブであるファミリーオフィスは、一族の持つ無形資産を後継世代がより効率的且つ効果的に引き継ぐことを可能にします。


無形資産の種類と学ぶべき内容は、一族と一族事業の事情によりカスタマイズする必要があるため一族ごとに様々です。しかし、一族教育の全体像をプランニングすることは、全ての一族に共通する要素です。その1つの手法として、人材の育成と成長に関するフレームワーク「9段階の教育プロセス」が挙げられます。

別記事「ファミリーオフィスが一族の教育にもたらす効果」もあわせてご覧ください。

一族の絆の強化

集団である一族が一族の有形・無形の資産を効果的に扱うには、何よりも担い手である一族に一体性(①共通の価値観、②共通のミッション、③互いに支え合うことの覚悟等)が求められます。

従来、日本のファミリービジネスでは、一族事業の経営者や一族の当主たる人物が一存で意思決定を行う傾向もみられました。
しかし、ファミリーオフィスを用いた一族集団としての運営を考えた場合、一族の中で最終決定を担う人物であっても、その者は自分の意見のみで物事を判断するのではなく、適切な一族会議体で一族の代表としてその決定事項を執行するが理想的な姿と言えます。


こうした一族のリーダーが担う役割を本来あるべき形で発揮させるには、他の一族メンバーが消極的な姿勢で参加してはなりません。消極的な参画では、一族のリーダーが一族の総意を纏めることができず、さらに言えば、リーダーの暴走や誤った判断を防ぎ、互いに支え合う同志としてリーダーへの健全な牽制機能を発揮できない恐れもあります。

別記事「ファミリーオフィスを効果的に活用するための基本と応用」もあわせてご覧ください。

ファミリーオフィスを導入する前に知っておくべき課題

世代を超えて一族全体の取り組みを継続する難しさ

世代を経て一族が拡大するにつれて、各人の関係性が希薄化してしまうのは自然の流れです。また、それぞれが育った環境が違えば、考え方や価値観が異なるのは、これも自然な流れと言えるでしょう。

そうした状況を乗り越えるためには、仕組みを作り、継続することが求められます。

別記事「家族憲章が必要な一族」では、そうした永続を目指す一族が構造的に持つ問題を乗り越える方法であるファミリーガバナンスについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

一族を支え続けるファミリービジネスもしくは保有資産の安定性と成長性

通常、世代を経ていくと一族の人数は増えます。
そして一族が拡大する中で、どのような者を一族集団のメンバーとして認めその範囲に含めるか、という論点が発生します。

いずれにしろ、永続を目指す一族には、その拡大する一族全体を支える運営資金を確保するためにも、その収益源となるファミリービジネスもしくは保有資産には安定性と成長性が求められます。

別記事「ファミリービジネスの資産と事業承継のポイント」では事業承継という事業の不安定化を招く要素をいかに乗り越えるかを詳しく解説しています。

ファミリーオフィスの設立・運営にはどのような準備が必要か

設立に向けて

日本では有形資産を管理・運用する資産管理会社を設立するケースは多く見られます。こうした、一族が株主であり、一族事業の株式を持つ資産管理会社や持株会社に、無形資産の管理・運用を追加で担わせることにより、既にある会社をファミリーオフィスとして機能させることも検討可能です。


ファミリーオフィスの設立に際し最も重要なことは、ファミリーオフィスが一族全体の利益に資するためにも、公平性と透明性のある組織を創ることです。特定の一族メンバーによる私物化や暴走を避けると共に、形骸化を防ぎ、常に一族に高い付加価値を与える運営を心掛けなければなりません。

別記事「ファミリーオフィスを設立する目的と設立に向けた取り組みを紹介」もあわせてご覧ください。

運営上のポイント

ファミリーオフィスの運営を継続的に行い、且つ常に目的を有した活発な活動を実践するには以下のポイントがあります。

(1)一族メンバーにもたらすメリットの共有

一族構成員がファミリーオフィスによってもたらされる金銭的メリットと精神的メリットを自覚することが重要であり、そのためには一族間の継続的なコミュニケーションが必要になります。

(2)関与する一族メンバーの選定

ファミリーオフィスに関与する方々は、関与することの意義を理解している一族メンバーである必要があります。一方で、残念ながらファミリーオフィスに関与することの意義を理解できないメンバーは必ず存在します。しかし、そのような方でもファミリーオフィスの価値を理解してもらうことが重要です。たとえ当初はファミリーオフィスの意義を理解できないまま参画していたとしても、ファミリーオフィスでの活動を通じてその意義に気付いていただくこともあります。

(3)適切なアドバイザーの活用

各分野の専門家をファミリーオフィスにアドバイザーとして加えることで、一族に寄り添った客観的な判断のもと、適時適切な選択と対策が効率的にできます。本業で多忙である一族メンバーにとっては、一層そのメリットは大きいでしょう。

別記事「ファミリーオフィスの円滑な運営に欠かせないポイント」もあわせてご覧ください。

ファミリーオフィスを活用している事例

一族及び一族事業の持続的な成長には、強い絆で結ばれた一族と一族の価値を反映した強い一族事業をつくり、両者の協力関係を築くことが重要です。ファミリーオフィスは単に有形資産を後継世代に遺すための器でなく、今まで属人的で重視されてこなかった一族の無形資産も受け継がせることを可能にします。

具体的な事例として、5家で構成される一族が、一族の永続化を目的として、これまでの資産管理・運用の仕組みに、家族憲章と一族会議体運営を加え、ファミリーオフィスとして活動を再構築したケースを以下の記事でご紹介いたします。

詳しくは「事例紹介:一族の効果的な意思決定体制の仕組み化」をご覧ください。

日本のファミリーオフィスの実態について

普及していない4つの原因

最後に、日本におけるファミリーオフィスの実態についてご紹介します。結論を申し上げれば、日本でファミリーオフィスは未だ普及しておらず、ごく一部の富裕層が取り入れているのみであるというのが現状です。


日本でファミリーオフィスの概念が広まらず、利用されてこなかった原因として、下記4つの仮説が挙げられます。

(1)欧米に比べて資産規模が大きくない

(2)経済環境に基づく集団統治の意識の低さ

(3)雇用制度に基づく資産運用ニーズの低さ

(4)スチュワードシップに対する意識の低さ

別記事「日本におけるファミリーオフィスの実態」もあわせてご覧ください。

経済産業省主催:ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会

国としてファミリービジネス支援の動きに力を入れ始めている状況があります。
2025年3月には、経済産業省主催による「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」がスタートしました。

研究会の詳細については別記事経済産業省「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」に米田隆が委員として参画」をご覧ください。

本研究会が開催されるに至った背景には、ファミリービジネスが日本経済において再評価されている点にあります。

ファミリービジネスが再評価されている点については別記事中堅企業元年-中堅企業政策に見るファミリービジネスへの再評価」もあわせてご覧ください。

「ファミリーガバナンス」の注目への高まりによって、そのファミリーガバナンスの担い手たるファミリーオフィスに対する注目も高まることが予見されます。

【参考資料】ファミリーオフィスについて

下記ダウンロード資料もお使いいただけると、より実感を持って考えることができます!

米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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