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ファミリーガバナンスとは?成功のための基礎知識

今回取り上げるファミリーガバナンスとは、ファミリービジネスの所有者(=支配株主)である一族に関するガバナンスです。

ガバナンスとは一般的に統治体制を意味し、昨今、注目されているコーポレートガバナンスは、中長期的な視点で持続的な企業価値向上を目指すための企業統治の在り方だと理解されています。

ファミリーガバナンスは、ファミリービジネスの永続的な発展を支えるための仕組みです。この記事では、ファミリーガバナンスの基本的な考え方や必要性、具体的な整備方法について解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.この記事のポイント
  2. 2.なぜファミリーガバナンスが必要なのか
    1. 2.1.そもそもファミリーガバナンスとは
    2. 2.2.ファミリーガバナンスが必要とされる理由
    3. 2.3.ファミリーガバナンスは一部の大企業のものだけではない
  3. 3.ファミリービジネスには「ガバナンスの二重構造」がある
  4. 4.「次世代にどのように承継するか」を基準にする考え方
  5. 5.ファミリーガバナンスが未整備の場合に起こり得ること
  6. 6.ファミリーガバナンスに関するよくある誤解
    1. 6.1.誤解1:家族憲章を作ればファミリーガバナンスは完成する
    2. 6.2.誤解2:承継直前に考えればよい
    3. 6.3.誤解3:資産管理だけがファミリーオフィスの役割である
  7. 7.ファミリーガバナンスを整備する主な方法
    1. 7.1.家族憲章
    2. 7.2.一族会議体
    3. 7.3.ファミリーオフィス
  8. 8.ファミリービジネス永続化の本質
  9. 9.まとめ

この記事のポイント

  • ファミリーガバナンスとは、一族が企業オーナーとしての役割や意思決定ルールを整理し、ファミリービジネスの持続的成長を支える仕組みです。
  • 承継時の対立や経営の混乱は、株式や経営権の移転だけでなく、一族間の合意形成や判断基準の未整備から生じることがあります。
  • 本記事では、ファミリーガバナンスの基本的な考え方、未整備によるリスク、家族憲章・一族会議体・後継者教育・ファミリーオフィスなどの整備方法を解説します。

なぜファミリーガバナンスが必要なのか

ファミリービジネスでは、事業承継や世代交代を通じて、一族と事業の関係性が変化していきます。その中で、一族としての考え方や意思決定のあり方を整理し、共通の方向性を持ってファミリービジネス事業を支えていくために、ファミリーガバナンスが重要になります。

そもそもファミリーガバナンスとは

ファミリーガバナンスとは、ファミリービジネスを所有する一族が、オーナーとしての役割や会社への関わり方、意思決定のルールを整理し、ファミリービジネスの持続的な成長を支えるための仕組みです。

ファミリービジネスでは、会社の経営だけでなく、一族の意思決定や株式の在り方、次世代への承継方針が企業経営に直接影響します。そのため、一族の理念や価値観を共有し、誰が何をどのように決めるのかを整理しておくことが重要です。

ファミリーガバナンスは、単に「親族間のルールを決めること」ではありません。一族と事業が良好な関係を保ちながら、長期的に価値を高めていくための基盤といえます。

ファミリーガバナンスが必要とされる理由

ファミリーガバナンスは、一族の価値観や方向性を整理し、ファミリービジネス事業を支える基盤を築くための仕組みとして求められています。

ファミリービジネスでは、世代を重ねるにつれて、一族の立場や事業への関わり方が多様化していきます。経営を担う人もいれば、株主として関与する人もおり、一族全員が同じ立場や視点を持ち続けるとは限りません。

特に、次のような論点は、多くのファミリービジネスで共通して見られます。

  •  後継者の選定や育成に対する考え方が一族内で異なる
  •  株式をどのように承継するかについて意見が分かれる
  •  経営に関与する一族メンバーと関与しない一族メンバーが混在する
  •  先代の理念や判断基準が十分に共有されていない
  •  会社への関わり方について一族ごとに認識の差がある

ファミリービジネスの強みは、長期的な視点に立った経営や、一族の理念に基づく一貫した意思決定にあります。しかし、その強みを発揮し続けるためには、一族としての共通認識を醸成し、意思決定のあり方を整理していくことが欠かせません。

ファミリーガバナンスは、そのための対話や合意形成を支え、一族と事業の持続的な発展を支える基盤となる仕組みです。

ファミリーガバナンスは一部の大企業のものだけではない

ファミリーガバナンスは、上場企業や大規模な資産家一族だけに関係するテーマではありません。創業家やオーナー一族が株式を保有し、経営や承継に関与している企業であれば、規模を問わず検討すべき論点が生じます。

ただし、必要となる整備内容は、会社規模や株主構成、一族の関係性によって異なります。重要なのは「大きな仕組みを作ること」ではなく、自社・ご一族にとって、どのような意思決定ルールや対話の仕組みが必要かを見極めることです。

ファミリービジネスには「ガバナンスの二重構造」がある

一般的に、コーポレートガバナンスとは、企業が持続的に成長していくために、どのように統治されるべきかを示す考え方です。

ファミリービジネスでは、これに加えて、一族の意思決定や一族としての方針が会社経営に大きく影響します。つまり、ファミリービジネスには、次の2つのガバナンスが存在します。

  •  ファミリーの意思決定に関するガバナンス(ファミリーガバナンス)
  •  会社の意思決定に関するガバナンス(コーポレートガバナンス)

重要なのは、ファミリーガバナンスがコーポレートガバナンスの土台になっているという点です。一族の方針や意思決定ルールが曖昧なままでは、会社側のガバナンスも十分に機能しにくくなります。

このように、ファミリーガバナンスとコーポレートガバナンスが連動している構造を、ファミリービジネスにおける「ガバナンスの二重構造」と捉えることができます。

企業の持続的な成長を支えるためには、会社のガバナンスを整備するだけでなく、その土台となる一族の意思決定や合意形成の仕組みを整えることも重要です。

図表 ファミリービジネスのガバナンスの二重構造

「次世代にどのように承継するか」を基準にする考え方

ファミリービジネスを考えるうえでは、スチュワードシップという考え方も重要です。

スチュワードシップとは、現在の一族は未来の一族から資産を預かっており、その資産をより良い状態で次世代へ承継する責務がある、という考え方です。

この視点に立つと、ファミリーガバナンスは、単に現在の一族メンバーの利害を調整するためだけの仕組みではありません。未来の一族株主や次世代の経営者、少数株主、非一族の経営陣・従業員を含めて、どのようにファミリービジネスを支えていくかを考えるための仕組みになります。

「誰に継がせるか」だけでなく、「何を、どのような状態で、次世代に受け渡すのか」を整理することが、ファミリーガバナンスの重要な役割です。

ファミリーガバナンスが未整備の場合に起こり得ること

ファミリーガバナンスは、問題が目に表面化しにくい見えにくいテーマです。

しかし、未整備のまま承継や世代交代が進むと、次のような問題が生じることがあります。

  • 後継者に対する一族内外の納得感が不足し、承継後の経営が不安定になる
  •  先代の考え方が共有されておらず、判断基準が人によって異なる
  •  一族株主の間で会社への関与方針が異なり、意思決定がまとまりにくくなる
  •  非一族の経営陣や従業員との間で、一族の方針をめぐる不信感が生まれる
  •  株式や現預金などの資産承継をめぐって、一族内の対立が発生する
  •  経営判断の遅れや混乱によって企業価値が損なわれる

こうした問題は、承継そのものが原因というよりも、承継前から存在していた認識のずれや合意形成不足が、承継をきっかけに表面化するケースもあります。

そのため、ファミリーガバナンスを整備する際には、制度や文書を作ることだけでなく、一族の現状や関係性、事業への関与の仕方を丁寧に整理することが不可欠です。

ファミリーガバナンスに関するよくある誤解

ファミリーガバナンスという言葉は耳にしたことがあっても、その内容や進め方については曖昧で、誤解されやすい側面があります。実務上でよく見られる代表的な誤解をご紹介します。

誤解1:家族憲章を作ればファミリーガバナンスは完成する

家族憲章は、ファミリーガバナンスを整備するうえで有効な手法の一つです。しかし、家族憲章を作成するだけでガバナンスが機能するわけではありません。理念やルールを文書化したうえで、それを一族内で共有し、必要に応じて見直し、実際の意思決定に活かしていく運用が必要です。

誤解2:承継直前に考えればよい

ファミリーガバナンスの課題は、承継のタイミングで急に生まれるものではありません。多くの場合、先代の考え方が共有されていない、一族間で会社への関与方針が異なるといった問題が以前から存在し、承継をきっかけに表面化します。そのため、承継直前ではなく、次世代への承継を見据えた早い段階から、一族内で対話を始めることが重要です。

誤解3:資産管理だけがファミリーオフィスの役割である

ファミリーオフィスは、資産管理だけを担う組織ではありません。一族の意思決定支援、価値観の共有、後継者教育、社会貢献活動の企画・実行など、ファミリーガバナンスを実効性のある仕組みとして運用するための幅広い機能を担うことがあります。

ファミリーガバナンスを整備する主な方法

ファミリーガバナンスは、自然に整うものではありません。まずは、一族の現状を整理し、意思決定上のリスクを把握し、承継に向けた優先事項を定めることが出発点になります。

そのうえで、以下のような仕組みを組み合わせて段階的に整備していきます。

家族憲章

家族憲章とは、一族の理念・価値観を共有するとともに、会社への関与の在り方や、株式承継・意思決定に関する基本的な考え方やルールを定めた文書です。

家訓のように精神的な内容を示すだけでなく、一族間のトラブルを未然に防ぐための具体的な行動指針や判断基準を明確にする点に特徴があります。

関連記事:家族憲章に意味があるのか?作成・運用のポイントを解説

一族会議体

一族会議体とは、一族とファミリービジネスに関する報告や意思決定、一族間の交流、利害関係の調整などを行うための仕組みです。

一族会議体は、一族総会と一族会議の2種類の会議体から構成されることが一般的です。一族総会は、一族全体での情報共有やコミュニケーションを担う場であり、企業でいえば株主総会に近い役割を持ちます。

一方、一族会議は、一族総会の委任や家族憲章の規定に基づき、一族に関する実質的な審議や重要な意思決定を担う場です。企業でいえば取締役会に近い役割を持つものと捉えることができます。

こうした会議体を目的に合わせて設計・運用することで、感情や属人的な判断に依存せず、継続的な対話と意思決定を行いやすくなります。

ファミリーオフィス

ファミリーオフィスとは、家族憲章や一族会議体を実効性のある仕組みとして機能させるために、一族の有形・無形の資産を管理・運用・承継し、一族を支援する組織です。

近年、ファミリーオフィスは高度な資産運用機能を提供する組織として認識されることもあります。しかし本来は、資産管理にとどまらず、一族の価値観や活動の共有、後継者教育、社会貢献活動の企画・実行、意思決定支援など、幅広い役割を担うものです。

ファミリーガバナンスを継続的に運用するためには、家族憲章や会議体を作るだけでなく、それらを支える実務的な中枢機能が必要になります。ファミリーオフィスは、その役割を担う仕組みの一つです。

関連記事:ファミリーオフィスとは

ファミリービジネス永続化の本質

世代が進むにつれて、ファミリービジネスでは所有と経営の分離や、事業に直接関与しない株主の増加が生じることがあります。

創業世代では、一族と事業が一体不可分に近い関係にあることも少なくありません。しかし、世代を重ねるにつれて、経営に関与する一族メンバーと、株主として関与する一族メンバーが分かれ、一族と事業の距離は少しずつ変化していきます。

この段階で重要になるのは、一族と事業が良好な関係を保ち続けることです。一族と事業が互いに支え合いながら成長していく関係性は、一度ルールを作れば自然に維持されるものではありません。

ときには、一族メンバー間の意見の違いや、非一族の経営陣・従業員との認識のずれに向き合う必要があります。だからこそ、理念や判断基準を共有し、対話を継続し、必要に応じて仕組みを見直していくことが重要です。

ファミリーガバナンスの本質は、一族を縛るためのルールづくりではなく、一族と事業が長期にわたり良好な関係を保ち、次世代により良い状態で受け渡していくための仕組みづくりにあります。

現在の一族が、未来の一族から預かった資産とファミリービジネス事業をより良い形で承継していくこと。その責務を果たすために、ファミリーガバナンスは継続的に整備・運用されるべきものです。

まとめ

ファミリーガバナンスは、一族の理念、意思決定、承継、会社への関与を整理し、ファミリービジネスの持続的成長を支える土台となるものです。

ただし、その整備方法は一様ではありません。株主構成、一族の関係性、後継者の状況、非一族経営陣との関係などによって、検討すべき論点は異なります。

まずは、自社・ご一族の状況を整理し、どこから手をつけるべきかを見極めることが出発点となります。そのためには、理念面だけでなく、承継・株式・意思決定の実務を踏まえた整理が欠かせません。

ファミリーガバナンスの整備を具体的に検討したい場合は、早い段階で専門家と論点を整理することが有効です。

【参考資料】ファミリーオフィスについて

下記ダウンロード資料もお使いいただけると、より実感を持って考えることができます!

米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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