[事例] 一族の横と縦のつながり

本事例は、持株会社を通じて複数の事業会社を経営している、5家で構成される一族が、家族憲章の作成を通じて、改めて一族のビジョンを確認、5家での事業運営を継続するために、一族内でのガバナンス体制を構築・運用を開始した事例です。

目次[非表示]

  1. 1.背景
  2. 2.ご支援内容①
  3. 3.ご支援内容②
  4. 4.まとめ


背景

過去、税務面に偏重し資本政策を検討した結果、持株会社の議決権の過半数を長男家が保有し、持株会社の株主総会で長男家のみで普通決議ができる状況になっています。


この様な資本関係ですが、実態は兄弟関係にある5家の現役世代が協議を行い5家の総意で各種の重要な意思決定が行われている状況があります。一方、いとこ同士の関係となる次世代では、兄弟関係にある現役世代よりも、それぞれの関係性は希薄化しかつ人数も増えています。

そして何よりも一族事業に対する思い入れが現役世代より薄れてきていることを現役世代は懸念しています。


この様な状況を踏まえて、次世代では意見対立が発生した際に多数派によって経営から一方的に締め出されてしまう世帯が発生することを心配する声も現役世代から上がってきています。


さらには、現役世代は一族の事業に強い思い入れを有し、ファミリービジネスとして継続していきたい希望を皆持っていますが、事業がこの様な一族間の不和を生む原因となってしまうのであれば、現役世代でファミリービジネスとしての継続に幕を閉じた方が良いのではないかといった意見まで出始めています。


ご支援内容①

まず現役世代で集まり、これまでこの一族が事業を通じて実現してきたこと、今後目指したい方向性について議論をしたうえで改めて整理を行いました。その結果、やはり根本的にはこれまで5家で築いてきたものを次世代以降にも引き継いでいきたいとの希望が皆一様に強いことを確認しました。


そこで、ご一族の懸念事項の根本原因である、「ご一族の一体性の希薄化」を防ぎ、ご一族の一体性の維持・強化を実現するためのファミリーガバナンスの構築に取り組むこととなりました。具体的には、家族憲章の作成を通じて、一族が事業を継続する目的を明文化するとともに、一族運営のルールを定め、家族憲章に則った公式なコミュニケーションを行う場である会議体を常設しました。


ご支援内容②

家族憲章作成の協議の中で、一族運営の体制をどの様に次世代に浸透させて定着させるかが中長期的取り組み事項として意識されました。これまで5家の現役世代は事業承継について体系的に議論することなく、事業承継に関する次世代に対するコミュニケーションはそれぞれの世帯の裁量にまかせられていました。


そこには、兄弟の家の子供のことに口を出すことは避けた方がよいという不文律が存在しました。しかし、5家での事業運営を継続させようと思えば、事業承継は個々の世帯の問題でもあると同時に、一族全体の問題と言えます。


そこで、現役世代の事業承継に関する考えを一族の考えとして次世代に伝え、そのうえで徐々に一族事業について知ってもらう場を作ることにしました。こうした取り組みを定期的にかつ継続して行っていくことで、一族の一体性の強化を目指していきます。


まとめ

ご一族内のコミュニケーションには、同世代間の「横のコミュニケーション」と、他世代間の「縦のコミュニケーション」が存在します。これら二つのコミュニケーションはそれぞれ違う性質を持つと同時に、一方のコミュニケーションで発生する問題が、他方のコミュニケーションに影響することがあります。


ご一族の一体性を維持・強化し続けるためには、意識的な仕組みを整備し、愚直に運営し続けることでこれら二つのコミュニケーションの両方が円滑に行われている状況を作ることが重要です。


本事例について、詳しくは​​​​​​​こちらのページもご覧ください。

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※ご紹介した事例は実例をもとにしたフィクションであり、登場する人物・団体等は実在する人物・団体等には一切関係ありません。

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米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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