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コーポレートガバナンスとは

ガバナンスとは統治体制を意味し、コーポレートガバナンスは企業における統治体制、すなわち経営体制の公平性と透明性を担保するための制度と言えます。高水準のガバナンスを擁する企業は、持続的な成長が見込めると市場や社会から高い評価を得ることができます。一方、ガバナンスが未整備の企業は、ゴーイング・コンサーンとしての条件を満たしているか否かが懸念材料として挙げられる恐れすらあります。今回は、こうした企業経営に不可欠な要素であるコーポレートガバナンスの全容に関してご紹介いたします。

目次[非表示]

  1. 1.コーポレートガバナンスとは
  2. 2.日本のコーポレートガバナンス改革
  3. 3.ファミリービジネスに求められるコーポレートガバナンス
  4. 4.コーポレートガバナンスの事例


コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスは、企業の所有と経営の関係において、所有者(株主)と所有者から資本を委託されたプロ経営者による業務執行を前提に、株主への管理・説明責任を果たす業務監督から構成される企業統治の基本的な仕組みです。コーポレートガバナンスの目的は、こうした業務執行と業務監督を通じ、株主のために企業の持続的な価値向上を図ることにあります。


日本のコーポレートガバナンス改革

我が国でコーポレートガバナンスが認知されるようになったのは、1990年代以降だと言われています。

1980年代、規制緩和やグローバル化などを背景に経済の自由化が進展し、金融機関が企業に対して持つ影響力は限定的になりました。しかし、バブル崩壊を契機に、その反動が企業の不正経理や粉飾決算などの不祥事として露見され、経営体制に一定の規制を設けて不祥事を防ごうとする動きが強まりました。その1つの手段として、コーポレートガバナンスの整備が注目を集めるようになったのです。しかし、従来の経営体制を鑑みず規制のみを厳しくすると、企業の独自性や成長力を阻害する要因になり兼ねないこともあり、当時のコーポレートガバナンス改革では、形式的な要件しか定めることができず、実効力のあるコーポレートガバナンス体制を築けた企業は少数であったと言わざるを得ません(むしろ、不祥事を起こした企業が経営体制の刷新として、事後的にコーポレートガバナンス改革に着手するという受動的な取組みが散見されました)。

2000年代に入ると、不祥事防止への意識は益々高まったことに加え、アジア経済の急成長やリーマンショック、東日本大震災による日本経済の低迷を受け、日本企業の成長力向上も大きな課題となりました。そこでコーポレートガバナンスに「守り」と「攻め」のガバナンス機能を持たせ気運が一気に高まり、当時の安倍政権による新成長戦略のもと、コーポレートガバナンスの強化が推進されました。その代表例が、コーポレートガバナンス・コードの策定(2015年6月)及び改訂(2018年6月と2021年6月)や東証の新市場区分の導入(2022年4月施行予定)です。
詳細については「コーポレートガバナンスの問題とあるべき姿」の記事をお読みいただけると幸いです。

  コーポレートガバナンスの問題とあるべき姿 株式会社青山ファミリーオフィスサービス


ファミリービジネスに求められるコーポレートガバナンス

日本企業において、ファミリービジネスは上場企業の約半数で、全国内法人の90%以上を占めると推定されています。すなわち、日本のコーポレートガバナンス改革は日本のファミリービジネスのコーポレートガバナンス強化を内包していると言えます。ファミリービジネスは、大株主である一族が業務監督と業務執行を兼任するケースが多いため、特に、非上場のファミリービジネスでは両者を明確に分けることなく経営活動を行いがちです。

しかし、上述のコーポレートガバナンス改革に伴い、非ファミリービジネスに対しても、これまでファミリービジネス固有の強みと言われていた長期戦略の実践が求められるようになり、今やファミリービジネスの持つ相対的な優位性が揺ぎ始めています

また、事業承継は、通常20~30年に一度しか起こらないため、ファミリービジネスでは経営者に権力が集中しやすい傾向にあります。単独の経営者が圧倒的に株式を保有して長期にわたり経営をすれば、形骸化しやすい取締役会のもと、一族の少数株主の利益が構造的に侵害される危険性があります。とりわけ、経営トップが経営の暴走や私物化に走れば、企業価値を著しく毀損し、遂には倒産に至るなど、未来の一族株主の利益を侵害することになります。

英国の政治哲学者であるジョン・アクトン(1834~1902)が遺した「権力は腐敗する傾向がある。絶対的な権力は絶対的に腐敗する。」という格言はまさにこうした事態を指し示しているのです。取締役会に高水準のガバナンス機能を持たせるためにどのような改革を施していくかが、今後の日本企業に問われているのです。

そして、ファミリービジネスには、企業のガバナンスだけでなく、一族のガバナンス(=ファミリーガバナンス)を整備することが求められています。一族の強い絆が一族事業のガバナンスを強化し、一族事業の持続的な成長をもたらすのです。ファミリーガバナンスについては、別記事「ファミリーガバナンスとは」に詳細を記載しておりますので併せてご覧ください。

  ファミリーガバナンスとは 株式会社青山ファミリーオフィスサービス


コーポレートガバナンスの事例

上記で説明したコーポレートガバナンスのあるべき姿を見事に体現している企業として、一般社団法人日本取締役会が発表している「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」に受賞した企業が挙げられるでしょう。別記事「【事例】参考となるコーポレートガバナンスを持つ企業」では、受賞企業の内、ピジョン株式会社、エーザイ株式会社、キリンホールディングス株式会社のコーポレートガバナンスに関してご紹介していますので、参考にしていただければと思います。


  【事例】参考となるコーポレートガバナンスを持つ企業 株式会社青山ファミリーオフィスサービス


日本企業の成長には、経済や法制度、技術革新などの外部の経営環境への対応と同程度に、自社ガバナンスの整備に代表される内部の経営環境への対応が肝要です。いくら仕組み上の改革を実施しても、経営陣と従業員が共にコーポレートガバナンス強化の意義を理解し、各人の言動に自ずと反映できなければ、効果は発揮されません。当然のことではありますが、どのようなスキームを講じる上でも、意識改革が何よりも重要なのです。

米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等