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ファミリービジネスにおける資産運用の必要性

資産運用に関する書籍やWEBサイトを拝見すると、ノウハウやシミュレーションなどに関して紹介したものが散見されます。しかし、資産運用の目的を理解し、何を実現したいのか明確にすることこそが最優先で理解すべき要素だと考えております。

今回は、資産運用の必要性、特に、ファミリービジネスの創業家一族にとって資産運用を実践する意義に関してご説明いたします。

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目次[非表示]

  1. 1.資産運用の必要性
  2. 2.ファミリービジネスのオーナー家一族における資産運用
  3. 3.ファミリーオフィスを活用した資産運用


資産運用の必要性

まず、我が国における資産運用の現状をご説明します。我が国で資産運用のニーズが高まってきたのは比較的最近(1990年代以降)のことであり、それ以前は資産運用による資産形成の重要性は決して高いとは言えませんでした。それは、定年まで安定的に働き続けることで人生の三大財務問題と考えられる、子育ての資金、住宅取得の資金、老後の生活資金を工面することができたからだと考えられます。

具体的には下記5点を背景に、資産運用を実施する必要性は低かったことが想定されます。第1に、充実した退職金と退職企業年金の支給で老後資金を確保できました。第2に、比較的高い預金金利がインフレによる預金の目減りを補い、給与で子育ての資金を十分に賄うことができました。第3に、インフレ気味で実質賃金が上がっている経済環境下では、借入による住宅取得が容易でした。そして、購入した不動産は、インフレ、人口ボーナス、高い経済成長率を背景に、現在よりもより多額の含み益を有する資産になる傾向にありました。第4に、親世代から引き継いだ不動産が資産形成に寄与しました。不動産を売却して老後資金を獲得する、もしくは、親と同居してその後、相続により不動産を取得することで、取得資金なく自宅を手にしてきたケースが多くみられました。第5に、定年まで働けず、十分な退職金をもらえないリスクは、65歳までの定期保険でリスクヘッジできました。

しかし、少子高齢化や経済の成熟化などに伴い、上記5つのロジックは必ずしも該当しなくなり、特に、老後の生活資金確保が大きな課題へと変貌しました。その結果、退職金を元手にした資産形成と老後資金を運用するニーズが台頭し、我が国における資産運用の気運を高めたのではないかと考えられます。


ファミリービジネスのオーナー家一族における資産運用

ファミリービジネスを所有する一族においては、本業の収益で既に十分な資産を保有し、資産運用を敢えて取組む必要はない方が多くいらっしゃるでしょう。しかし、自社に勤める従業員が持ちうるこうした資産形成ニーズに配慮した取組みが求められています。個人の資産形成に寄与した施策は個々の企業の経営方針や経営環境により変わるものの、社員とその家族を重宝する姿勢は常時不可欠です。

一方、先行きが不透明な時代になりつつある現代の経営環境では、万が一の備えがファミリービジネスのオーナー家一族においても重要です。本業が危機に瀕したときや将来の成長に向けて多額の投資資金を緊急に要するときなど、所有者たる一族が最後の貸し手としての役割を果たさなければなりません。それ故、保有資産の多寡に拘らず、ファミリービジネスのオーナー家一族においても、資産運用を行う意義は大きいのです。


ファミリーオフィスを活用した資産運用

上述の通り、ファミリービジネスのオーナー家一族が行う資産運用は、一族が一体となって取組むことで、その効果をより高めます。個人より集団で行うことで当然ながら元本が増えることに加え、個々人が持つ様々な価値観を統合して行う一族全体の利益に資する投資が可能となります。一族が共通の目的を実現するための取組みを通じて、一族の絆は強まり、結果として、中長期的に一族の有形資産をさらに増やす仕組みが構築できます。

すなわち、ファミリービジネスのオーナー家一族において資産運用の目的は、単に一族の持つ現預金を増やすことではありません。富の源泉である無形資産を基底とする一族全体での資産運用は、一族とファミリービジネスの永続的発展に大きく貢献するのです(一族の持つ無形資産に関しては、別記事「ファミリーオフィスの対象となる資産<無形資産編>」で詳述しておりますので、併せてお読みいただければ幸いです)。

  ファミリーオフィスの対象となる資産<無形資産編> 株式会社青山ファミリーオフィスサービス


こうした仕組みを創り上げる際に、ファミリーオフィスの活用が有効となります。ファミリーオフィスの設立には、各一族メンバーが持つ価値観やビジョンなどを集約して、一族全体の目的を策定しなければなりません。一族が足並みを揃えた状態でファミリーオフィスを活用し、資産運用や社会貢献活動、子弟教育など、一族のニーズに合致した多岐にわたるサービスを提供します。

具体的にファミリーオフィスで資産運用を行うには、次の3つの形態の中から一族の実態に即した形態を選択することが望ましいです。1つ目は自らの一族が設立して資産運用を行うシングル・ファミリーオフィスです。一族の持つ資産管理会社に近い役割を果たします。2つ目は、他の一族が設立したファミリーオフィスに参加する形で資産運用を行うマルチ・ファミリーオフィスです。他の一族と併せて運用ができるため、より巨額で稀有な投資機会を得やすいです。3つ目は、金融機関が提供するファミリーオフィスサービスを活用するマルチ・クライアント・ファミリーオフィスです。運用を金融機関に委託するため、本業で多忙である一族の関与は最小限で済みます。


どのような形態で資産運用を行うにしても、ファミリーオフィスにおいて不可欠な要素は上述の一族の持つ無形資産です。目先の金銭パフォーマンスに一喜一憂するのではなく、一族がファミリーオフィスを通じて実現したいことや解決したい社会課題などを常に念頭に置いた立ち振舞いが求められています。そうした行動を一貫して取り続ける一族は、資産運用を通じて、一族の持つ有形・無形を含む「広義の富」を増やすことができ、一族と一族事業の永続化の土台を築いていくのです。

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米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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