【事例】後継世代の成長と育成
ファミリービジネスの永続化に必要な要素の1つに一族の個々人の成長と育成が挙げられます。一族メンバーの成長と育成を実現できる仕組みを整備し、適切に運用されている事例をご紹介します。
目次[非表示]
- 1.相談者概要と相談内容
- 2.施策
- 2.1.ロードマップの作成
- 2.2.キャリアプランの検討
- 3.ポイント
相談者概要と相談内容
社長(創業者)にはお子様が2人おり、長男が30歳(既婚・子1人)、長女が27歳(既婚・子1人)です。長男の職業経験は現在の会社のみ、グループ子会社に勤めており、グループ全体の経営管理などには携わっていません。長女は本社経理部門に所属していましたが、当時は育休中でした。
社長は「会社からの恩恵を受けながら、これからも一族が仲良く共に支え合ってほしい」という想いをお持ちで、事業承継に関しては、社長は当時65歳であり、遅くとも70歳までには次の代に渡したいとお考えでした。
施策
ロードマップの作成
残された5年間で社長の想いや考えを実現するには、計画的に後継世代の能力を高める必要があることから、後継世代の成長と教育に関する具体的施策を速やかに進めることになりました。
後継世代の教育に着手するにあたり、まず後継世代の成長と教育における学習項目や実施時期を明記したロードマップを作成しました。
ロードマップの学習項目は、自己成長を促す動機付け分野と、求められる能力を身に付けるための学習領域の、2つの分野に大別されます。
まずロードマップを作成した目的は、後継世代と承継に向けた道筋を共有し共に進む体制作りを行うことでした。
キャリアプランの検討
学習におけるロードマップを作成し、平仄をあわせる形でグループ内のキャリアプランも同時に検討しました。
検討した結果、長男の事業経験はこれまでグループ子会社に限定されていたため、まずはグループ中核会社のジュニアボード※に参加し、全社戦略立案の経験を積みながら、長期的に取締役や代表取締役に就任するためのスキル・経験を身に付ける計画としました。
また、中核会社のジュニアボード参加と同時にグループ子会社の取締役に就任し、当面の目標として同子会社の代表取締役就任を目指すという、2軸からなるキャリアプランを計画しました。
長女は本人の希望(子供の育児を優先)を考慮し、一族の安定株主として事業に関わっていくプランをメインシナリオとしました。
ポイント
後継世代が自発的に能力開発を行うように促す
後継者教育における動機付けの取り組みの中心は、一族理念の理解・浸透を通して、後継世代に一族としての責任を自覚させ、自発的に努力する姿勢を身につけさせることです。
そのうえで、事業承継者に求められる能力と時期を明示し、その習得を支援します。ここで言う求められる能力とは、経営者として必要な知識や経験、経営者としての器(人間力)などが代表的に挙げられます。
このように、動機付けと能力開発の道筋を組み合わせて後継世代に伝えることで、自発的な能力開発を促すことが期待できます。
より具体的に、且つ長期的に自身の成長を考える
事業承継のために求められる能力を伝えるにあたっては、ハードスキルに加えて、人間力といったソフトスキルもあわせて伝えました。人間力といったソフトスキルは概念自体が抽象的であるため、キャリアプランと紐づけることでその必要性を具体的にイメージしていただき、自身の成長を長期的に考えていただく狙いがありました。
このように後継世代と共に検討したロードマップとキャリアプランをもとに、後継世代の意見や進捗状況を把握しながら、後継世代自らの成長と計画的な教育を通して事業承継を進めています。
今回は後継世代の教育にかかる事例をご紹介しました。皆様の参考材料となれば幸いです。
※ジュニアボード:社内で選抜した若手・中堅社員によって構成される疑似的な経営委員会。
※ご紹介した事例は実例をもとにしたフィクションであり、登場する人物・団体等は実在する人物・団体等には一切関係ありません。
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