事業承継における後継者の選定・育成方法の考え方
事業承継に際し、後継者選定は事業承継の成否だけでなく、企業そのものの存続も左右します。すなわち、後継者育成とその選出には企業の命運を決める当世代に課せられた重要な責務と言えます。
今回は、ファミリービジネスの事業承継において、後継者の選定方針やその育成内容に関し説明していきます。
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目次[非表示]
- 1.後継者選定の在り方
- 2.後継者育成プランの作成
後継者選定の在り方
事業承継を検討する際、一族の後継世代が次の経営者に就任することが理想的だと考える経営者は多いと思います。しかし、現経営者の子どもという理由だけで、社内への十分な説明や本人の実績を通じた社内の納得感の形成もないまま、後継者に選出することには大きなリスクを伴います。たとえ、形式的に社長職を子どもに引き継いだとしても、他の経営陣や社員がその新社長を心からリーダーとして受け入れ、共に支えていく意思が醸成されなければ、組織としての突発力が落ち、やがては企業価値の毀損を招きます。むしろ、どの様な人材が一族事業の後継者に相応しいのか、その選定基準やプロセスを事前に明らかにし、公平性と透明性のある選定方針のもと、後継者を選抜することが欠かせません。それ故、現経営者が退任する際には、こうした方針に従い、十分な時間をかけた上での後継者を選ぶことが前提となります。
一方、一族事業に一族の後継候補者を既に入社させている場合、将来、社長に就任する可能性があることを本人は意識するでしょう。そのため、後継者として求められる要件として、能力・経験・見識に加え、経営を担う覚悟などを予め明確にし、後継者として相応しい人材像に向いつつあるプロセス自体を本人自身がモニタリングできれば、本人や周囲も安心して経営承継の趨勢を見守ることができるはずです。
後継者育成プランの作成
後継世代には、一般教養に加え、一族理念や一族事業の後継者に求められる業界知識、リーダーシップなどが求められています。また、当世代の持つノウハウや人脈の承継、これまで一族が社会から得てきた信頼や評判などの維持・向上に必要な手法を受け継ぐことも併せて重要となります。こうした一族の持つ資産は、世代を経るごとに一族のメンバー間の関係性が希薄化していくため、一定の仕組みに基づいた管理・運用を一貫して継続しない限り、急速に失われていきます。その意味でも、せっかく当世代が増やし蓄積した資産を一族間で共有しなければ、後継世代ではその効力を発揮することが困難になります。
後継世代は事業承継者として、最終的にどのような知識やスキル、人間力などをいつ、どの程度まで習得するべきか、年齢及び学習項目ごとに計画を立てることが望ましいです。具体的な内容は別記事「後継者育成の在り方」をご参照ください。
後継世代の教育プランを作成する際には、次の2点を注視することが重要です。第1に、策定する教育プロセスを事業承継候補者に限定せず、全ての後継世代のメンバーに適用することです。仮に事業承継者にならない一族のメンバーであっても、創業一族の株主としては、一族事業への一定の影響力を持ち続けることに変わりはありません。そうしたメンバーは、作成された教育プランから各々必要な要素を取捨選択して学ぶことで、たとえ最終的に一族事業に就業せずとも、一族株主として一族の永続化に間接的に寄与することが可能となります。その際、こうした体系的な学びから得るところは後継世代全体にとって大きなメリットになり得ます。
第2に、教育プランの策定には、当世代の1人でも多くのメンバーが携わるように仕向けることです。様々な考え方を持つ複数の当世代メンバーが教育プランの立案や実行に関与し、同時に後継世代から直接フィードバックを受けるようにします。こうした世代間で協力する教育プログラムの取組みを通じ、後継世代は様々な選択肢に触れ、より主体的な職業選択への意思決定を促されます。その結果、一族を取り巻く内外の環境変化に対応することのできる多様な能力を持つ次世代の一族株主集団が形成されるのです。そうした努力が多世代間で積み重ねられることで、後継世代以降の一族メンバーの成長力を高め、一族事業の企業価値の更なる向上に繋がります。
後継者育成には、一般的なモデルが存在しても細かな内容やフローは、一族及び一族事業ごとに大きく異なり、最良の育成計画を事前に構築することは大変難しいです。そのため、一族や社内の理解を得たうえで、周囲を巻き込みながら試行錯誤を繰り返し着実に進めていくことが重要です。
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