事業承継における後継者の選定・育成方法の考え方
事業承継において後継者選定は、事業承継の成否だけでなく、企業の存続までも左右します。すなわち、後継者育成とその選定は、企業の命運を決める現世代に課せられた重要な責務と言えます。
今回は、ファミリービジネスの事業承継における、後継者の選定方針やその育成内容に関し説明していきます。
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後継者選定の在り方
後継者を選定するには
事業承継にあたり、一族の後継世代が次の経営者に就任することが理想的だと考える経営者様は多いと思います。しかし、十分な説明や本人の実績を通じた社内の納得感の形成もないまま、現経営者の子どもという理由だけで後継者に任命することには大きなリスクを伴います。
たとえ、形式的に社長職を子どもに引き継いだとしても、他の経営陣や社員がその新社長を心からリーダーとして受け入れ、共に支えていく意識が醸成されていなければ、組織力は落ち、やがて企業価値の毀損を招きます。
そのような事態を避けるため、どのような人材が一族事業の後継者に相応しいのか、その選定基準やプロセスを事前に明らかにし、公平性と透明性のある選定方針のもと、後継者を選抜することが欠かせません。それ故、現経営者は退任に向けて、選定方針に従い、十分な時間をかけた上で後継者の選定を行うことが求められます。
後継者の選定基準・選定プロセスを明確にする
単に創業家の子どもであるから後継者に選ばれていては、周囲からの反感や不信感を当然に生むことになります。
そのため、能力・経験・見識に加え、経営を担う覚悟などといった、後継者として求められる要件を予め明確にし、後継者として相応しい人材像に向いつつあるプロセス自体を誰もがモニタリングできれば、本人や周囲も安心して経営承継の趨勢を見守ることができるはずです。
さらに、後継世代が一族事業の後継者になることを望まない場合、あるいは、経営最高責任者になるには、企業側の人材要件が著しく厳しく、非一族の社員・役員やプロ経営者の登用が望ましい場合も想定できます。
こうした場合においても、後継者の客観的な選定プロセスに関する基本方針は大きな存在感を示し、企業の継続的発展へ大いに寄与し得るものとなります。
後継者育成プランにおける2つの重要なポイント
ここまで述べてきたように、公平性と透明性をもった事業承継プロセスを構築するためには、後継世代が事業承継者として、どのような知識やスキル、人間力などを、最終的に、いつ、どの程度まで習得するべきか、年齢及び学習項目ごとに計画を立てること望ましいといえるでしょう。
具体的な内容は別記事「後継者育成の在り方~ファミリービジネス後継者を育成する2つの手法~」をご参照ください。
後継世代の教育プランを作成する際には、次の2点が重要です。
教育プランの策定により多くの現世代のメンバーが携わる
第1に、教育プランの策定には、1人でも多くの現世代のメンバーが携わるように仕向けることです。様々な考え方を持つ複数の現世代メンバーが教育プランの立案や実行に関与し、同時に後継世代から直接フィードバックを受けるようにします。
こうした世代間で協力する教育プログラムの取組みを通じ、後継世代は、様々な選択肢に触れ、より主体的な職業選択への意思決定を促されます。その結果、一族を取り巻く内外の環境変化に対応することのできる多様な能力を持つ次世代の一族株主集団が形成されるのです。
そうした努力が多世代間で積み重ねられることで、後継世代以降の一族メンバーの成長力を高め、一族事業の企業価値の更なる向上に繋がります。
教育プロセスを全ての後継世代のメンバーに適用する
第2に、策定した教育プロセスを事業承継候補者に限定せず、全ての後継世代のメンバーに適用することです。仮に事業承継者にならない一族のメンバーであっても、創業一族の株主としては、一族事業への一定の影響力を持ち続けることに変わりはありません。
そうしたメンバーは、策定された教育プランから各々必要な要素を取捨選択して学ぶことで、たとえ最終的に一族事業に就業せずとも、一族株主として一族の永続化に間接的に寄与することが可能となります。その際、こうした体系的な学びから得るところは後継世代全体にとって大きなメリットになり得ます。
後継者育成には、一般的なモデルが存在しても細かな内容やフローは、一族及び一族事業ごとに大きく異なり、最良の育成計画を事前に構築することは大変難しいです。
そのため、一族や社内の理解を得たうえで、周囲を巻き込みながら試行錯誤を繰り返し着実に進めていくことが重要です。
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