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企業理念の浸透|創業者の想いを受け継ぐ方法を紹介


昨今、企業経営のあり方に関して、パーパスの見直しが市場から強く求められています。自社の存在意義を見直し、社会に何をもたらすのか、改めて考えることが企業の中長期的な価値向上をもたらすのです。今回は、こうした考えの源である企業理念の意義に加え、如何にして社内に浸透させていくのか、その考え方と手法に関してご説明いたします。

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目次[非表示]

  1. 1.企業理念のあり方
  2. 2.企業理念の浸透に向けた取組み


企業理念のあり方

企業理念とは、企業の存在理由として掲げられる、創業者の想いが反映された概念です。業種や業態、規模などに拘らず、全ての企業が企業活動を通じて、何かしらの社会課題を解決することを目的に事業を始めた経緯があります。

特に、営利法人においては、利益の継続的な確保が同時に達成すべき使命となるものの、利益のみを追い求める企業では、中長期的な存続は望めません。自社と直接利害関係のない者や地域社会からの評価が、企業の持続的な成長力を支えているのです。それ故、経営人材及び社員全員の企業理念を理解した上での業務遂行が、企業の業績を大きく向上させます。

商品・サービスの開発や顧客との商談、バックオフィス業務などのあらゆる業務において、根幹を成す考え方が社員間で一致していることに大変大きな価値があります。こうした足並みを揃えた状態の上に、個々の価値観や強みが付け加えられることで、本来あるべき多様性が生まれます

但し、こうした多様性の創出及び維持は容易ではありません。企業理念への理解を意識するあまり、個人の考えの反映が制限されてしまうことや気付かない内に企業理念が固定概念として自身の考えの幅を狭くしてしまう恐れがあります。反対に、個人の考えを尊重するあまり、企業理念に即してない言動や社員間のコミュニケーションのすれ違いを生む可能性もあります。常に現状を把握しようとするアンテナを張り、安定した環境に満足せず、両者のバランスを取り続ける(あるいは、敢えて崩して革新を図る)積極的な姿勢が経営者及び社員全員に求められています。


企業理念の浸透に向けた取組み

創業者が健在である間は、創業者の圧倒的な求心力により企業理念が浸透しやすい風土となる傾向があります。また、創業の苦しみを共に経験した社員は、企業理念がもたらす価値を身体経験として体験しているため、こうした社員の存在が企業理念の浸透において、大きな役割を果たします。

しかし、時の経過に伴い、企業理念を創業者から直接学ぶ者は減っていきます。また、事業が成功し規模が大きくなる企業ほど、業務内容への意識が高まり、企業理念の持つ価値を経験する機会が失われていきます。こうした状態が企業理念の形骸化を引き起こすのです。

その対策として、企業理念を定期的に学ぶ場を設けることは大切です。経営人材と社員間、また、社員同士で考え方の整理を主目的とする公式の場は、企業理念の浸透には不可欠です。しかし、こうした機会を設けるだけで、中長期の企業価値向上へ高い効果をもたらすのかに関しては懐疑的な面があります。その打開策の1つとして、目に見える成果と連動する形で企業理念を浸透させることが有効だと考えます。

典型例としては、企業理念をコンセプトにおき開発した商品の売上目標の達成や企業理念を落とし込んだ提案を顧客から賞賛され、契約締結に至ったことなどが挙げられます。こうした成功体験はその大小に拘らず、自社の企業理念の正当性及び重要性を実体験として認識できる機会となり、企業理念を重宝した言動を心掛ける契機になります。そうした経験を積み重ね、徐々に自身のオリジナリティを業務に反映することで、さらなる付加価値と社員のモチベーション向上をもたらすのです。

こうしたアプローチを実行する中で、成果として実を結ばないケースもあるでしょう。その際には、検討期間が短期間であるため、あるいは企業理念が現在の社会が抱える課題の実態にそぐわないものであるためと想定されます。前者の場合は、当然ながら辛抱強く努力を続け、些細な成功でも自信を持ち、必要な改善を粛々と進めていくことが大切です。一方、後者の可能性が少しでもあれば、改めて企業理念を考え直す場を設けることも必要でしょう。いずれにせよ企業理念と企業活動が整合性のある形で組み合わさるように、両者のあり方を試行錯誤することが求められています。

上記の一連の説明は、企業のステータスに関係なく、全ての企業に該当する要素だと言えます。しかし、日本の大半を占めるファミリービジネスには、こうした要素に加え、所有者たる創業家一族のあり方も、企業理念に大きな影響を与えます。詳細は、別記事「ファミリービジネスにおける企業理念」をご覧ください。


企業理念は目に見えて認識することができず、その効果がどれほど企業価値を向上させるのか計測することは事実上、不可能です。しかし、正しい想い無くして、中長期的な事業の成功が見込めないことは自明です。自社が何のために活動を続けているのか、そのコンセプトともたらした成果を日常的に意識し、結び付けることが企業理念の浸透を自然な形で推進できるのです。

【参考資料】ファミリーオフィスについて
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米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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