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同族経営企業が3代目の壁を乗り越えるためのポイント

我が国はファミリービジネス(同族企業、同族経営)大国と呼ばれることがままあり、実際に国内法人の9割以上はファミリービジネスだと言われています。しかし、こうしたファミリービジネスを持続的な競争力をもって、50年、100年と存続させることは容易ではありません。実際に、ファミリービジネスの研究が進んでいる欧米では、多くの論文でファミリービジネスの3代目(創業者の孫世代)以降の存続率は10%程と示しています。我が国のファミリービジネスが欧米と同様の状況となるか否か明言はできませんが、こうした存続率に陥る要因の多くは、国を問わずに推測することができます。

今回は、ファミリービジネスの継続を困難にさせる要因に関して3世代目に焦点を置いて紹介していきます。

【参考資料】

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目次[非表示]

  1. 1.3代目以降において希薄化する創業者との関係性
  2. 2.3代目以降において希薄化する同世代間の関係性


3代目以降において希薄化する創業者との関係性

創業者の考え方やエピソードは、企業活動の原点であり、創業家一族こそ大切にしなければならない価値観です。2代目は創業者の子どもであるため、創業者の仕事ぶりや考え方を直接、体験できる機会に恵まれており、創業者の価値観を踏まえた事業経営を行いやすくなります(仮に、創業者とは異なる事業や経営体制を選んだとしても、企業を継続するための価値観を理解することは創業家として不可欠です)。しかし、3代目以降ではこうした体験をすることが難しくなり(一定程度、世代を経ると不可能になる)、創業者に関しての先代からの話や書物などを通じ、間接的にしか把握できません。すなわち、世代を経れば経るほど、創業者との繋がりや創業者への意識が薄れる可能性は高まり、ファミリービジネスの根幹に位置する価値観に差が生じやすくなる傾向にあります。その結果、経営判断の基準が本来あるべき考え方にそぐわないことで、企業継続を阻害する要因になり兼ねません。


3代目以降において希薄化する同世代間の関係性

3代目において、同世代間の一族は、兄弟に加え、いとこ関係の一族となります。一般的にいとこ同士は同じ屋根の下で暮らしていないため、同世代間の関わり合いは限定的になりがちです。こうした世代が、将来、一族株主を代表する立場に就く際、同じ一族であってもお互いのことをよく知らない環境下であったため、一族株主として一枚岩になることは容易ではありません。むしろ、一族の個々のメンバーが持つ価値観もバラバラになる傾向にあります。その結果、一族の統制を取ることができず、一族の内部分裂を発端にファミリービジネスの存続を危ぶむことになり兼ねません。3世代目に至るファミリービジネスでは、そのリスクが一気に高まるのです。


上記2つの障壁を乗り越え続けているファミリービジネスは、潜在的に高い成長力を有する企業と言えるでしょう。しかし、成功を続けるファミリービジネスにも落とし穴が存在します。例えば、成功するファミリービジネスでは、その後継世代は多大なる恩恵を受けることができます。その1つである高い教育を享受できる後継世代は、将来、一族事業ではない魅力のある他の企業に就業する機会が提供されます。すなわち、成功を続けるファミリービジネスであっても、一族から後継者を擁することができず、ファミリービジネスの継続を断念するケースも少なくありません。

さらに、我が国においては、相続税の負担が多くの他国より重い傾向にあるため、一族が安定大株主としての立場を維持するには、資金面から困難になる場合もあります。また、その負担を軽減しようと、経営に関与しない一族にも株式を保有させることも想定されますが、その結果、一族内で議決権が分散し、一族の求心力を弱めてしまう恐れ(特に分散された株式をそれぞれの子ども世代に相続されたとき)があります。


ファミリービジネスの存続には、同じ価値観を根底に持つ一族集団として、一族事業を支え続けることが求められています。そのためには、時間がかかり効果が見えにくいと思われても、一族の価値観や存在意義、ビジョンを改めて明らかにし、一族間で共有して後継世代に伝えていく密なコミュニケーションが必要となるのです。

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米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等

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