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【事例】参考となる企業理念

企業理念は各社各様であり、どの様な企業理念が正しいのか判断することは容易ではありません。さらに、企業理念が企業価値にどれ程の効果を与えるのか、直接、数値として実証する術がないこともあり、企業理念の重要性に対する認知度も個人個人で異なります。

今回は、3社の企業理念を紹介させていただきますが、その他にもユニークで大変参考になる企業理念を掲げる企業はいくつもあります。是非とも、業種・業界を問わず様々な企業の企業理念を調べてみてください。

目次[非表示]

  1. 1.事例①:Amazon
  2. 2.事例②:サントリーグループ
  3. 3.事例③:カヤック

事例①:Amazon

Amazonの企業理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業、そして地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指しています」としています。また、同社では、「お客様を起点にすること」、「創造への情熱」、「優れた運営へのこだわり」、「長期的な発想」の4つの理念を指針としています。

企業理念は企業の在り方を簡潔に表現したものであるため、Amazonの企業理念はまさにそのことを体言したものと言えます。日々の企業活動では、こうした明快な企業理念を基軸に活動することができ、社内における最も大切にすべき価値観に齟齬が生じにくくなります。

また、Amazonは、創業時の価値観を現在の事業活動に取り込んでおり、社員へ浸透させていることが如実に分かります。その1つとして有名な「ドア・デスク」が挙げられます。ドアに脚を付けた机である「ドア・デスク」は、創業者のジェフ・ベゾス氏がコストパフォーマンスに優れているという観点から考案し、社内で使用され始めた机です。当時は、この手製の机がAmazonの文化を象徴する存在になろうとは誰も考えていなかったと、ニコ・ラブジョイ氏(創業時のAmazonの社員)は述べています。しかし、このエピソードを契機に、現在のAmazonでは、お客様に低価格のモノ・サービスを提供するための優れたアイディアを「ドア・デスクアワード」という社員への賞として、認知されるまでに至っています。企業理念を社員の活動レベルまで反映させた好事例の1つと言えるでしょう。

詳細は同社のWEBサイト(https://www.aboutamazon.jp/)などをご覧ください。


事例②:サントリーグループ

サントリーグループの企業理念は次の階層となっています。

①サントリーグループの約束:「水と生きる」

②わたしたちの使命:「人と自然と響きあう」

③わたしたちの志:「Growing for Good」

④わたしたちの価値観:「やってみなはれ」「利益三分主義」

詳細の説明は同社のWEBサイト(https://www.suntory.co.jp/)をご参照いただければと思いますが、特筆すべき点は④に掲げたサントリーグループの価値観に創業者の理念が組み込まれていることです。サントリーグループは、所有と経営の分離体制を実現しているファミリービジネスであり、非一族の経営陣も創業家の価値観に基づいた企業活動を実践できていることが推察されます。こうした価値観を重宝する企業が、持続的な発展を遂げるファミリービジネスの1つの特徴と言えます。

サントリー創業者の鳥井信治郎氏がことあるごとに口にした「やってみなはれ」は、現状に満足せず、異種業界を含む新しいことへ挑戦を続けるサントリーのチャレンジ精神の起点として知られています。同社WEBサイトには、「『結果を怖れてやらないこと』を悪とし、『なさざること』を罪と問う社風に根差した主な商品をご紹介します。」と、研究開発の一環として数々のフロンティア製品を紹介しています。

また、鳥井信治郎氏の「利益三分主義」の精神は、サントリーの社会貢献活動の原点とされています。同社WEBサイトには「創業者・鳥井信治郎が信念としていた『利益三分主義』にさかのぼります。(中略)サントリーグループでは、創業者の『利益三分主義』の精神を受け継ぎ、社員が主体的に関わりながら多くの活動を展開してきました」と明記しています。具体的には、サントリー美術館やサントリーホールなどにおける活動が挙げられます。


事例③:カヤック

カヤックは他社の企業理念とは一風変わった紹介をしています。同社WEBサイト(https://www.kayac.com/)には「経営理念は会社にとって非常に重要なものである。…と言われても、いまひとつ実感がわかない。(中略)なんとなく体のいい言葉を並べてみても、形骸化してしまう。よくあるパターンです。(中略)本当に力のある、いい経営理念であれば、それを突き詰めるだけで、会社にイノベーションを起こすことも可能です。本来、経営理念にはそれぐらいの力は余裕であります。カヤックでは、何度も理念と対峙してきてそう思うに至りました。そんなカヤックの現時点(2021年7月現在)の経営理念が『つくる人を増やす』です」と掲載しています。

創業者である柳澤大輔氏は、「経営理念オタク」を自称し、良い経営理念として重要な3要素を、1.成長性を示唆していること、2.理念から戦略&戦術のヒントがあること、3.社会に貢献するものであること、と定義しています。同社WEBサイトには、柳澤氏の経営理念に対する考え方や他社の経営理念を纏めたものが掲載されているので、ご参照していただけますとより理解が深まると思います。

また、カヤックでは、理念の見直しを目的に、社員全員が参加する理念合宿を年2回開催し、理念の浸透及び企業活動レベルへの反映に取組んでいます。カヤックらしさを身につけながら、独自性のある新しい商品やサービスを実際に生んでいる、と柳澤氏は述べています。


上記3社は、いずれも企業理念を通じて、企業内外に対して、自社の設立目的や特徴を簡潔に伝えることができています。加えて、企業理念の背景にある考え方やエピソードを明らかにし、具体的な行動レベルまで理念を落とし込んだ、企業理念を効果的に活用している企業と言えるのではないでしょうか。同様のことが読者の皆様が所有(経営)される企業の企業理念においても、実現されているか否か見直すことはいかがでしょうか。

米田 隆(監修)
米田 隆(監修)
早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センター 上級研究員(研究院教授) 公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング 教育委員会委員長 株式会社青山ファミリーオフィスサービス取締役 早稲田大学法学部卒業。日本興業銀行の行費留学生として、米国フレッチャー法律外交大学院卒業、国際金融法務で修士号取得。金融全般、特にプライベートバンキング、同族系企業経営、新規事業創造、個人のファイナンシャルプランニングと金融機関のリテール戦略等を専門とする。著書に『世界のプライベート・バンキング「入門」』(ファーストプレス)、訳書に『ファミリービジネス 賢明なる成長への条件』(中央経済社) 等