ファミリーオフィスの基本とその本質的な価値
日本でファミリーオフィスという単語が広まるきっかけになったのは、2021年に起きたアルケゴス・キャピタル・マネジメント(以下、アルケゴスと言う)というファミリーオフィスによる投資の損失が大手金融機関にも影響を及ぼしたニュースだと言えます。
アルケゴスは複数の金融機関からの借入で過度なレバレッジをかけた投資を行っていました。しかし、投資先の株価下落に伴い、アルケゴスは追加の証拠金の要求に応じることができず、結果的に貸付を行っていた各金融機関は巨額の損失を計上することになりました。この出来事をきっかけに、「ファミリーオフィス」は、メディアにおいて富裕層を対象にした資産管理、あるいは資産を運用するための法人として紹介されるようになりました。
しかし、実際のファミリーオフィスは富裕層の資産管理・運用だけに機能を絞ったものではありません。弊社はファミリーオフィスを、一族の「広義の富」の永続化支援機能を担う組織と定義しており、一族が築き上げた金融資産や不動産等の「財産」分野だけでなく、一族の一体性強化や次世代教育、社会貢献活動等、「非財産」分野も含めた幅広い役割を果たせる組織と位置づけしています。こうした定義づけは古くから展開されている欧米のファミリーオフィスを参考にしたものです。本稿では、ファミリーオフィスの成り立ちや当時の目的、さらに現代ではどのように形を変えてファミリーオフィスが機能しているのかを紹介します。
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ファミリーオフィスの起源
ファミリーオフィスの起源は、19世紀初頭、米国で欧州との貿易により財を成した富裕層一族が、一族の資産管理を信頼できる個人に預けたことから始まったと言われています(諸説あり)。この説明だけを聞くと、資産管理を担うだけの組織というイメージを持たれるかと思われますが、その背景には、一族のもつ理念や価値観の共有、一族の教育、積極的な社会貢献活動等を前提とする考えが当然の如く存在しています。
一族の絆が強く、常に成長できる環境を一族が自らに提供し、さらに、社会の発展に貢献しているからこそ、一族は自らの一族に誇りを持ち、一族の一体性を創り上げることが可能となります。そのプロセスを経ることで、初めて持続的に一族がもつ富の増加を実現することができます。その意味で、富の形成は一族の一体性の成果であり、結果であると本来考えるべきなのです。
現代のファミリーオフィス
この考え方は現代においても、勿論保たれています。一方で、欧米のファミリーオフィスは、資産運用に偏りすぎているとも言われるようになりました。それは、目に見える資産のみに着目され続けた結果、「ファミリーオフィス=資産運用会社」のイメージが強まったためと考えられます。特に、株主資本主義の強い米国ではその傾向は顕著です。そのため、欧米では従来のファミリーオフィスが担う機能の内、非財産分野を支援するプライベートオフィスというものも新たに登場しております。
日本では、ファミリーオフィスそのものが未だ普及しておりませんが、徐々に注目を集めつつあります。だからこそ、日本に今後広まるファミリーオフィスは、財産と非財産の統合型である、原点に立ち返った本来のファミリーオフィスであるべきと我々は考えています。
日本でどのような機能をもつファミリーオフィスが考えられるのか、詳しくは『ファミリーオフィスとは 』の記事をご覧ください。
【参考資料】 ファミリーオフィスについて |